ロシアのウクライナ侵略戦争と中国への懸念
昨年末、ウクライナとロシアの国境に10万人のロシア軍と戦車部隊が集結していることを欧米各国は衛星でとらえロシアに懸念を示しました。2017年就任したトランプ大統領は米国と中国の貿易収支格差を取り上げ是正を迫った、対応しないと輸入品の関税によって対応し、互いに譲ることのない関税合戦がバイデン大統領になっても継続しています。米国は中国ファーウエーの5G(第5世代の移動通信システム)による”情報漏洩の懸念を理由に”を自由主義圏に中国の先進的情報技術を採用しないよう各国に迫りました。半導体など中国への技術移転を厳しく制限し、高度な技術の生産を米国は自国回帰を実行に移しました。厳しい状況の中で、プーチン率いる専制主義国家ロシアのウクライナ侵略戦争の予兆は昨年末軍事衛星でキャッチされNATO加盟国、G7首脳は懸念と強力な制裁を科すと警告しました。軍事大国ロシアは2014年のクリミア半島併合と同じように侵攻を試みました。中国習近平主席は北京オリンピック開会式にプーチン大統領を招待し中国とロシアの結束を計りました。ウクライナ国民が連帯してロシアと闘い100日を過ぎても戦火がやみません。中国にとって一帯一路の重要な要衝であるウクライナとの関係も懸念される事態になっています。
ゼロコロナ政策、中国のGDP成長率の鈍化
中国のGDP成長率の推移は6%台を維持していましたが、2020年度の新型コロナウイルス感染拡大によって大きく落ち込みました。しかし、欧米各国と違い「ゼロコロナ政策」で感染拡大を抑え、中国は一早く「感染を抑えることに成功し、翌年にはGDP数値で前年比大幅回復を見せた国家」として習近平政権は誇りました。感染拡大の対応に苦しむ欧米各国は、迅速なワクチン開発と接種によって徐々に経済復活を試み、感染力の強いオミクロン株の拡大は、重症化率が低いことからコロナと共存する対応にシフトしました。しかし、習近平政権は成功した「ゼロコロナ政策」を継続し、北京オリンピックの無観客開催、経済の中心都市上海、政治経済の首都北京において、一人の感染者でも隔離するロックダウンで都市機能と生活基盤を閉鎖する専制主義国家として抑え込む対応を計りました。
厳しい制裁の副作用として経済都市機能と生活環境の麻痺が起こり対外的にも大きな負の局面が現れています。我慢を強いられる国民はGDPが落ち込み、生活困窮が現れると潜在的な批判が燻ぶることが懸念されます。海外企業は中国からの撤退を一部模索を初め、中国への投資は減少することも出てきています。
文化大革命~改革開放~共同富裕への転換
毛沢東主席の復権運動による権力闘争に明け暮れた「文化大革命1966~1976年」は毛沢東の死によって終焉し、疲弊する中国の政権に復帰した鄧小平は計画経済の非効率を打破し、可能性のある一部の者が先に豊かになってその他のものを豊かにする「改革開放経済」を実行しました。改革開放を進めるとが自由を求める若者が声を上げ出し1989年「天安門事件」へと発展します。
14億人の潤沢な労働力と消費によって発展した中国は急激な格差社会が生まれ、一党支配の習近平政権は「共同富裕」の理念を掲げ国民統治を計ろうとしています。共同富裕政策に掲げた習近平主席は、不動産開発、学習支援、IT産業の是正を打ち出しました。不動産開発への金融制限、不動産税によって不動産開発(384社)の破綻危機(バブル)、学習支援の制限(学習塾の閉鎖18万社)、巨大化するIT産業(アリババなど・・・)に対する政権への批判と独占的地位の乱用を制限しました。格差是正のために成長分野の国家による制限を実行しています。経済発展を牽引してきた発展理論は「共同富裕」により大きく後退することが考えられます。2022年度のGDP政府予想数値5.5%に低下しています。
「共同富裕」所得分配が強調されています。第1次分配は労働者・農民の分配率増加、第2次は税制を用いた再分配、第3次は富裕者の寄付を求める政策です。
中国不動産バブル経済破綻の懸念
2008年のリーマンショックの世界的なバブル金融経済破綻に苦しむ中、成長する中国は積極的な公共投資などで世界をリードしました。中国の高度成長、潤沢な労働力、生活基盤の急成長による消費拡大の中でGDP成長を続けました。2010年日本を追い越し世界2位の経済大国になる中で、2012年習近平国家主席の就任が発表され、矢継ぎ早に一帯一路構想、2013年AIIB(アジア投資銀行)設立など、絶対的国家アメリカの衰退(2008年リーマンショック・2011年同時多発テロ)の中で世界の潮流は”中国”に向かいました。
中国高速鉄道は2007年に始動し13年で営業距離3万8千㎞、日本の10倍の高速鉄道網が施設され、中国内陸部にまで網羅されています。都市機能を結ぶ高速鉄道網に沿って地方都市も反映し成長を遂げてきました。高速鉄道網・高速道路網の繁栄と共に成長のエンジンとなった不動産開発が中国成長を牽引してきました。中国の高度成長の中で懸念されてきた不動産バブルの様相に政府は規制によって徐々にコントロールを計っていました。2021年9月恒大不動産集団の33兆円の負債による破綻懸念が表面化し、混乱の状況が今も続き、同様の不動産事業者が多数あることが判明しています。中国は清算をどの様にするか、大きな懸念材料になっています。7000万戸の明かりのつかない物件(投資物件)が存在すると言われています。不動産不況は建設事業者・労働者、鉄鋼などの建設資材の減少など中国成長のエンジンに大きな影響を与えます。