2019年、旭化成の研究者吉野彰氏と二人の科学者がリチュームイオン電池研究・開発の功績でノーベル化学賞が授与されました。吉野彰氏が負極の炭素素材発見でLIB(リチュームイオン・バッテリー)が製品化されソニーのビデオカメラで実用化しました。
使い捨ての乾電池から2次電池(充電・放電を繰り返して使用する)技術の開発は蓄電池・充電池・バッテリーとして進化しました。日本の電池メーカーは競うように小型化、軽量化と安全性の技術を磨き、リチュームイオン電池の生産は日本の独壇場で、携帯型ノートパソコン・スマホ・コードレス家電など多様な用途に広がりました。生産技術も新興国に広がりを見せ、EV自動車の普及に伴って、車載用電池開発競争が熾烈になっています。パナソニックは三洋電機から受け継いだ電池事業を世界一に引き上げ、米国EV自動車専業メーカーテスラと共同で米国に工場を建設しました。しかし、テスラの生産拡大の中で中国CATL、韓国LG化学の車載電池を採用し競合しました。日産自動車リーフは自社開発の電池を採用していましたが、電池事業を中国に売却、現在中国CATL製などを使用しています。日本の車載電池は、韓国・中国企業にシエアーを奪われ苦境に追い込まれています。日本は通産省を窓口に車載電池開発事業者の連携組織が発足、官民挙げて車載電池の開発強化を急いでいます。
トヨタ、車載電池開発と生産に1兆5千億投資
ハイブリッド技術で世界を制したトヨタが2021年9月7日、10年で車載電池開発と生産に1兆5千億(1500億円/年)を投じ、関連車両800万台/2030年を目指す計画を発表しました。高度なハイブリッド技術が今も進化し続けています。トヨタはFCV(燃料電池車)MIRAIの開発に力を注ぎ、小型のEV車やモーターショーでEV車のお披露目しても量産化体制の表明がなくハイブリッドに固守し続けてきました。欧米で2035年に全てをEV化すると表明、日本も「温室効果ガス排出ゼロ」の中で対応を迫られていました。直近のニュースでドイツメーカーは水素燃料電池車の可能性を残すと表明しています。
トヨタはHV技術、PHV、水素自動車MIRAIなどの技術で、EV化へは消極的とみなされていました。しかし、2030年に向けたEV化への投資を力強く表明しました。
トヨタは全固体電池を目指した開発
現在、ハイブリッドを認めているのは日本と中国で、欧米諸国は2035年に全車種EV化を表明しています。世界一の生産企業トヨタは最大の車の開発は「安全」であることを求めています。ハイブリッド技術で培われた車載バッテリーのノウハウを生かした車載電池の開発を急いでいます。
ハイブリッド車、水素電池車MIRAI ,水素エンジン車、全固体電池、幅広い選択肢の技術を求めて独自の全方位戦略を描いています。トヨタのハイブリッド技術は電池技術のノウハウが積み重なっています。トヨタは特許を含めて先行している全固体電池開発の過程はハイブリッド自動車で安全性を確認する計画で実行する表明しています。
~ EV自動車の問題点 ~
- 自動車の1/3を占める高額な車載電池の価格低減
- 車載電池の安全性の確保(車載電池の火災の危険)
- 航続距離と充電時間の改善とインフラ整備の充実
- 石炭火力発電所のCO2の排出電力を利用するEV自動車
- 100年積み重ねた内燃機関産業の転換による構造的懸念
・CO2を排出しない水素エネルギーの選択肢も残されています。
・自動車の制御、自動運転などAI技術の開発進化に半導体開発・生産の拡大
カーボンニュートラル 自動車工業会 10月提言
自動車工業会の豊田章男会長が二期(4年)勤めている自工会の会長職の延長が報道されています。日本・世界の自動車業界を牽引してきたトヨタ自動車の社長が求められているものが大きいと思います。発言では自動車産業の550万人の雇用を守る重要な転機にあるからです。世界はEV化に舵を切り、欧米では2035年に100年の歴史を閉ざす内燃エンジン車両の輸入規制を宣言しています。大きな転換は自動車産業の雇用を大きく失う危機も待ち受けています。日本では簡単に電気自動車に置き換えればよいと言う問題ではないと説いています。